東京出張の道中に読んでいた本に,アフリカのイブに続いて,アダムすら東アフリカ出身の男性であることが突き止められたという話しがでていた。前者はミトコンドリア・イブともいわれるもので,ミトコンドリアのDNAに書き込まれたマーカー(突然変異の記録)をたどっていくと,地球上の全人類は5万年前の一人の女性にたどりつくという壮大なストーリーだ(もちろん遺伝学者らは「真実」とみなしている)。
男性についても1990年頃から研究がすすみ,Y染色体のマーカーをたどることによって,ミトコンドリア・イブ同様に一人の男性にたどりつくということが判明したという。中国の研究者らはなんとか「そうではない」証拠をあつめようと(つまり,北京原人を起源するとする人類を証拠立てようと)したが,結局は,東アフリカ起源説をよりつよく肯定する結果を得てしまった。
この話し,あまりにも専門外であり,「。。。と言われている」としか言いようがない。とはいえ,「人類みな兄弟(きょうだい)」はあやしげな標語ではなく,現代の遺伝学からみると,「真実」であるようだ。
壮大な人類の歴史も5万年という区切りを与えられるとまだ手がでそうだ。東アフリカの男女は,その時から,すさまじい勢いで(進化の時間軸から見て),地球制覇をなしとげたのだ。少なくともわれわれのミトコンドリアとY染色体(男性のみ)には,5万年前の東アフリカ(エチオピアあたり)に生きていたヒトの記録が残っている。
という話しに感激していると,マイケル・ジャクソンの死亡がニュースに流れた。マイケルと聞くだけで,デトロイト,モータウン,ダイアナ・ロス,マービン・ゲイ,シュープリームズ,コモドアーズなどが次々と連想される。テレビで頻繁に流されるマイケル・ジャクソンストーリーを見ていると,スリラーの頃はまだまだ肌は黒く,表情も生き生きとしていた。1980年代以降は,どんどんと肌が白くなり,表情もぎこちなくなっていく。大変な人生を送った人なのだと思う。
デトロイトはクルマの町。フォードがかろうじて残っているが,アメリカの自動車産業は2009年に「壊滅」した。その同じ年に,マイケル・ジャクソンが死亡した。そこに,なにか「運命的」なものを感じる人も多いのではないだろうか。世界は(アメリカは)大きなうねりの中にあるといえる。
はてさて,そのようなことを考えていた日の午後,高田の馬場で研究会があった。今回のお客様は,「食農教育」を実践されている保育園の園長。実に刺激的で興奮する内容であったが,その中身はさておき,保育園は東村山市にある。トトロの森の舞台だ。映画の中にでてくる「七国山病院」は,八国山緑地の麓にある病院(二つあるうちの一つ)がモデルだという。今も,住宅開発の嵐が吹き荒れているようだが,「七国山病院」の裏手にはまだ雑木林が残っているという。
私のあたまの中では,5万年前と意外に近いところに存在していた東アフリカの「おかあさん」と「おとうさん」,すさまじい人生を送ったであろうマイケル・ジャクソン(という一人のアフリカ系アメリカ人),彼が生まれ育ったデトロイトという町,今なお人を引きつけてやまないR&Bのサウンド,時代や場所を超越した「トトロの森」を生み出した東村山市,そこで「自然と食」に囲まれながら育てられている保育園児たち,といったものがグルグルと渦巻いていた。
これだけバラバラのはなしをひとくくりにできるようなストーリーなど組み立てられるものではない。山手線に乗って,ぼんやりとしていると,周りの人たちがチカチカと似たような動作をし始めた。私同様にぼんやりと「夢想」にふける人など,10人に1人もいない。だれもがせっつかれたように,強迫的に,携帯電話を操作している。
混み合った電車に乗っているときぐらい,諦めて,ぼんやりと「夢想」にふけっては?とおもうのだが,はなしは逆らしい。皆,一心不乱に誰かと更新したり,webサイトをチェックしたり,ゲームをしたりしている。混み合った電車の中では,諦めること,耐えること,待つこと,「夢想」することしかなかったのだが,今はそうではない。まるで何かに追われているかのように,真剣に,必死に,携帯電話を操作している。東アフリカの「お母さん」はこの光景をみてどのように思うだろうか?マイケルは?「トトロの森」の保育園児らは?またまた私の「夢想」はつづく。

