Philadelphia滞在最終日のディナーではとんでもない体験をすることとなった。Rozin先生の息子であるLexは,Philadelphia近郊の大学で音楽理論と音楽心理学を教えている。そのLexと彼の友人であるFrankがシェフをかってでて,年2回の食事会をおこなっている。丁度この日が予定日で,私を参加メンバーに押し込んでくれたのだ。
最初は,お遊びの延長ぐらいに考えていた。甘かった。お遊びだからこそとんでもない遊び方をしてしまう(総じてアメリカ人というのはホドホドということをしらない)。その報告をしておきたい。
集まり:クルマに乗って連れて行かれたのは一軒の大きなお宅。そこにはすでに20名ほどの人が集まっている。まず出されたのはマッシュルーム味のホームメイド・プレッツェル。そして注がれたのはFuller's ESBというビール。
仲間内の食事会と軽く考えていたのが間違いだった。これから始まる晩餐会は10皿のコース料理であり,その一皿一皿に対してベストマッチするビールが提供されるという。
夜風にあたりながら20名ほどの人々が自己紹介をしあう。「私は○○です。お会いできてうれしいです」という決まり文句を繰り返す。ここでの問題は,名前と顔を覚えるのが実に大変ということ。今回は堂々とノートをとることにした。会話はそれほどややこしい話しにはならない。いつ来たのか,何をしているのか,といった程度の質問だ。それほどのストレスではない。さて:
1皿目:生牡蠣のイクラもどき載せ。イクラ(なぜかキャビアと呼んでいた。。。)はグレープフルーツをベースにしたイミテーションで,口に入れたとたんに,えぇっと驚かせる趣向。ビールはReissdorf Kolschという銘柄。
2皿目:蛸のフリッツ。これにはOmegnang Witteというビールが出された。料理が出てくる度にあれこれと説明が入り(かなりの部分は聞き取れない。。。無念),続けてビールの説明が入る。
3皿目:Parsnipという野菜(の根)を使ったニョッキ。これにはLa Gougale Biere de Gardeというフランスのビールがでてきた。
4皿目:ソーセージのトッピングされたザワークラフト。アヒルの肉で味付けされたキャベツ煮込みということらしい。なにやら切干大根の煮付けを思い出させる。自家製マスタードをつけると味が際立ってくる。これには自家製ビールがでてきた。かなり個性的な味のするビール。
5皿目:一口サイズのアニス風味のグレープフルーツ(お口直し)。ここまでが前菜という感じだろうか。中華料理でおなじみのレンゲに載せられたシャーベットが登場。さすがにビールはでてこない。
<休憩>さほど広くない一部屋にテーブルが3つ。それぞれに7人が座っている。常連が多いようだ。皆,猛烈な早口で,かつ,大声でしゃべり合っている。私の右隣は小児科医の女性,左隣はRozin先生,その隣は麻酔科の先生でやはり女性。今回の場所を提供された方でもある。向かいにいる男性は作曲家であり同時に音大の先生でもあるということ。どうもこの集まりは医者や大学教員といった「インテリ層」の集まりらしい。会話はウィットと皮肉のきいた知的な雰囲気がただよう。それでいて,着飾っている人は一人もおらず,皆ラフな格好をしている。ともかくうるさい。
6皿目:本日のメイン料理である「感謝祭の夕食」。ターキーではなく「小さな鳥」(ウズラのような印象)を使って伝統料理を演出している。ビールは,また別の自家製ビール。
7皿目:コーヒー風味の牛肉ショートリブ。ビールはコーヒー風味のする不思議なビール,Southern Tier Imperial Coffee Stoutというもの。
8皿目:デザートその1,チーズとフルーツ。非常に美しい盛りつけ。ビールはTripel Karmelietがあわされた。
9皿目:デザートその2,タイトルはエッグ・ベネディクト。なんだ,これは!?と,参加者全員が驚かされた一品(といっても何がそれほどおもしろいのかがよく分からなかった。。。残念)。回りの人の反応からすると,ベーガンアイスクリームを食べることになるとは思わなかった,ということらしい(のだが,今ひとつ分からない)。ビールは,Tommyknocker Imperial Nut Brown Aleという非常に特徴のあるビールが出された。
10皿目:デザートその3,「」バーボンとスコッチとビールというタイトル。ひと言で言うとオリジナルなチョコレートボンボン。ビールはCelebrator Doppelbockというしろもの。
<ようやく> 4時間近い晩餐会もようやく終わりを迎えた。参加者全員がクルマで来ていることもあるのだろう。さすがに皆後半は,ビールの飲み方もコップ半分程度の味見程度になっていた。食べ続け,飲み続け,なによりもしゃべり続けた4時間も,ぼちぼちお別れの時間となった。
作り手の挨拶,自宅を提供し,ビールを提供したホストの挨拶,その度に繰り返される拍手と歓声,しみじみとアメリカに来たのだと実感する。
<印象>アメリカ人(といっても大学職にあるような人々しか見えていないが)の印象は,第1に「ホドホドということをしらない」,第2に「よくしゃべり,よく笑う」,第3に「楽しむ:enjoy, pleasureことが何よりも大事」というもの。われわれ日本人は,「ホドホドに,場合によればガマンをし,アキラメルことも多い」し,「言葉よりも雰囲気を重視」するし,「徹底的に楽しむということはなかなかできない」という印象がある。
Lex & Frankの晩餐会は,ヘタなフレンチをはるかに凌駕するレベルのものであった。年2回の「素人料理お楽しみ会」は,今回はビールであったが,別の一回はワインだそうだ。いったいどのような料理が登場し,そのそれぞれの料理にどのようなワインが登場するのだろうか。そんなことを考えると眩暈(めまい)がしてくる。