1996・97年の新聞・雑誌から

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 仕事部屋を整理していると1997年頃の新聞・雑誌の切り抜きがひとかたまりとなってでてきた。そのまま捨てるには忍びない。10数年前に興味をひいたものは何だったのだろうか。以下,列挙してみる。

 怒らぬ若者「いい人」ばかり。。。日経,97,7,7 文化欄。「消えた活火山人間」というコピーもついている。「怒らぬ若者たち」といった本がちょっとしたブームになった時期だ。この傾向はより強まって現在に至っているように思う。キャンパスを見ていても,男女ともに「嬌声」をあげている学生の姿は毎日のように観察されるが,どなりあったり,なぐりあいをしている学生の姿をみることはまったくない。「不機嫌である」「不愉快である」というメッセージを(抑え気味に)表出することはあっても,怒り感情をあらわにする姿を見ることは本当に少ない。

 。。。だからこそ,「怒りに満ちた」事件,犯罪が人目を引くのかもしれない。それにつけても「怒りの世代」からすると,今の世の中はあまりにも静かで,平穏で,平和だ。

 MUSTの国,ニッポン。。。中国,97,7,6 日本はMUST(ねばならない)世界であり,フランスはWANT(したい)の世界だ,という回顧ばなしから始まる文化欄記事。なるほどね,よく聞く話だねと思いながらも,つい読み進めてしまう(共同通信の配信記事なのだろうが,引き込み方がうまい)。内容が,最初の記事と見事にリンクしているところがおもしろい。「しかたがない」「そうするもの。。。」「はい,わかりました」という,実に従順な行動パターンの背後にあるものがMUSTであるということだ。もちろん,この「縛り」を縛りとして意識すると大変なストレスとなるのだが。。。

 日本人は「やさしい」のか。。。日経,97,9,7 同題のちくま新書の書評。「やさしさ」の起源(使用例)を,万葉集,源氏物語,平家物語にまでたどり,「やさしさ」を「誠」と並ぶ日本のもう一つの倫理(律)としてとらえ直す,という内容らしい。薄っぺらになってしまった「やさしさ」に,新たな生命を吹き込もうとする意志に満ちた本である,とのこと。

 「やさしさ」は今の大学生を理解するキーワードになるように思うが,「やさしさ」の意味空間は相当に広い(個体間変動が大きい)。誰か卒論あたりで「やさしさに関する心理学的研究」をしてみてもいいのでは。ちなみに「やさしさの精神病理」(岩波新書)は1995年の刊行。縫いぐるみが「純粋なペット」であり,それに「究極のやさしさ」を感じる若者など,「やさしさ」の(病的)事例が豊富にでてくる。このような「やさしさ」は,どうも,互いの気持ち(内面)に決して立ち入らないこと,傷つけたり傷つけられたりするリスクを徹底的に回避することに特徴があるようだ。フィギュアー愛好の人々(多くは青年層男子)にも共通するように思う。論理的帰納として,この「やさしさ」はとんでもなく「残酷な行為」の許容にもつながるのだろう,と思う。うぅん。。。「やさしさ」とはなんだろうか?

 長崎屋台村。。。JR新宿駅東側を職安通り方向へ向かうと「長崎屋台村」がある(らしい)。おすすめは「まる松」のチャンポンとのこと。しかし,ウェブで調べると「長崎屋台村」はでてこない。すでに廃業している模様。飲食事業で成功するのはほんのひとにぎりといわれる。山ほどの借金をかかえたまま表舞台から消えていった事業者らがどれほどいるのだろうか。ファーストフードやコンビニエンスストアーのフランチャイズチェーン店開業に失敗した人々しかり。「食の繁栄」もその水面下では膨大な数の「敗残者」を生み出している。

 豚玉。。。シェフが焼く逸品とのこと。大阪,松屋町筋を高津公園側へ一本入ったところにある(らしい)。ウェブで調べると現存しており,繁盛している模様。なんばと上本町の中間あたり。なかには「成功者」もいる。

 六本木グルメ映画祭。。。「バベットの晩餐会」(すばらしい映画!),「恋人たちの食卓」(泣ける映画!)など9作を上映とのこと。他の7作が何なのか気になったが,さすがに1997年の情報は簡単にひきだせない。

 人類VSウイルス。。。イ・ウイルスの感染,増殖のプロセスを「やさしく」図解した科学読み物。ウィルスとは,超小の生命体(一応,RNA遺伝子をもつので)であって,世代交代を目的に他の生命体に進入し,進入した細胞に細胞死(アポトーシス)をもたらせる。腸内細菌のようなギブアンドテイクの関係はないので,こちら(進入される人間の側)とすれば排除するしかない。マクロファージがウイルスを認識し,Tリンパ球が活性化し,抗体(IgM, IgM)が発射され,あるいはキラー活性でウイルスをやっつける。われわれは,まさに命(RNA)をかけた戦争をしているのだ。

 味なホームページ。。。1997年の文化欄ならではというか,インターネットでお料理レシピが入手できますという記事。大阪市のカレー専門店「がらむまさら」のホームページなどが紹介されているのだが,今調べると店そのものが見あたらない。10年の歳月は長い。。。

 けじめのない育児。。。1996,10,19 日経。「生きる力」弱める,親の生活見直し必要,自立心養う教育を,というコピーがつづく。乳幼児の教育は「自律」がポイントであるのだが,今の生活は「自律」「自立」をなかなか許してくれない。キャンパスでトイレに行っても,暗くなれば自動的に電気がつくし,用便後の処理もお湯が出てきて洗浄をしてくれる。。。とはいえ,この記事で対象となっていた幼児が今や大学へ入りつつある。「生きる力」は弱まっているのだろうか?

 「危ない」のに出回るんです。。。1996,9,5 日経。こんにゃくゼリーの話しだ。同年,1歳10ヶ月の男児がこんにゃくゼリーをのどに詰まらせ死亡するという事故があった。以下はあくまでも一般論だが,「危ない」食品を次々と市場から排斥していくと食べるものはなくなってしまう。ファーストフード(ハンバーガーなど)しかり,牛丼しかり,防腐剤入り総菜しかり。毒性のない(あるいはリスクの少ない)食品などそうそう簡単に入手できるものではない。食物とはすべからくすべてが毒と考える方が現実的だ。むしろ,毒とは何か,危険とは何か,といったことを考えるための教育手段とすべきものではないかと思う。

 日本人の身体観の歴史。。。1996,10,6 養老孟司著の書評。読んではいないが養老節満載なのだろうと思う。

 風呂とエクスタシー。。。日付不明 書評(平凡社選書) 入浴がもたらす無我の境地,トランス状態をもって「恍惚」を得るのが目的,という結論らしい。世界中の風呂文化が紹介されている(らしい)。確かに温泉の浸ることの快楽は何ものにも代え難い。

 ラーメン。。。グルメ選手権開催第1回ラーメンの部なる記事。どれどれと見ていくと,気になる店名がいくつもでてくる。
   久留米ラーメン魁龍小倉本店:久留米と銘打っていながら久留米には本店も支店もない。久留米出身の店主が「幼い頃の味」を再現したということらしい。きっと,間違いなく,粗野で,荒々しい,戦後復興期から経済成長期へとつながる「久留米の味」なのだろう。

 4年生大学の教授数。。。1999, 12  99年の学校基本調査速報によれば,全国の4年生大学の教授数(専任)は56,655人ということだ。すこし気になって,最新の数字を調べてみた。平成21年5月1日現在で,総数は172,026名。「教授」「専任」という条件では数字がでてこない。平成15年の就業者数は6316万人ということなので,367人に一人という勘定だ(ちなみに高等学校の教員数は239千人,中学校では250千人なので,大学教員は高校教員,中学教員の7割前後という人数になる)。大学進学率は53.9%だ。学部学生数は252万7千人。大学院学生数は26万4千人だ。単純に計算すると,教員一人あたりの学生数は学部で44.6人,大学院で4.6人だ(ちなみに高校で13.9人,中学で14.3人)。大学へ進学してきた高校生が教員との距離を遠く感じても不思議はない,ということだろう。

 

 

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